9.3. データのマージ(統合)

9.3.1. 複数スキャンの平均化と標準偏差の計算

残念なことに,私たちが測定するデータの多くは率直に言って,ひどいものです.1回のスキャンはたいていの場合,ノイズかあるいはノイズが支配的なもので,振動として認識するのは難しいです.幸運にも,中心極限定理は常に成り立ちます.ノイズが大きくても,もし十分な量だけ積算することができるのであれば,真のデータとなり得るでしょう!

グループリストにあるマークの付いたすべての項目はマージの際にひとまとめにされます.マークされたグループが本当にマージしたいものなのか注意してください!

データは μ(E),規格化された μ(E),あるいは χ(k) のいずれかとしてマージすることができます.多くの場合は,どれを選んでもほとんど変わりはありません.χ(R) についても同じことです.(これはテストすることができます.実際,試しに行ってみることをお勧めします.)マージされたデータの標準偏差も計算され,プロジェクト中のデータや特定の出力ファイルと共に保存されますが,ATHENA は標準偏差について,以下に示したようにプロットする以上のことは行いません.デフォルトでは,それぞれのデータについて同じ重みでマージされます.

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図 9.6 Merge メニューからデータを様々な方法でマージすることができる

マージされた後は,マージされたものが一定のスタイルでプロットされます.マージプロットのスタイルは,環境設定♦Athena→merge_plot 設定項目で設定することができます.デフォルトでは,以下のようにデータ ± 標準偏差という形で表示されます.他の選択肢は,分散プロット やマージされたデータとマージする前のすべてのデータをプロットするというものです.

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図 9.7 μ(E) についてマージされ,標準偏差と共にプロットされた場合

データマージ機能は ATHENA で最も重要なものの1つです.私のいつものやり方では,試料について測定されたスキャンを注意深く整列,マージし,そのデータを ATHENAARTEMIS で更に解析するというものです.

ご用心

マージする前にデータがきちんと整列されているかどうかは,本質的に 重要なことです.正しく整列されていないデータについてマージしてしまうと,微細構造を有意に減衰させてしまうでしょう.

μ(E) や 規格化された μ(E) としてマージし,マージされるデータすべてに参照スペクトルが存在する場合,これもマージされ,マージにより新しくできた2つのスペクトルは同じように参照チャンネルとして結びつけられます.そして,マージされた参照チャンネルはマージされたデータの整列用の標準として使うことができます.

μ(E) についてマージした場合には,他の2つの選択肢とは本質的に異なる点があります.もし,検出器からの信号の値が変化してしまうよう何かが起き,連続するスキャンの μ(E) が大きく異なっているが,規格化された μ(E) データについては矛盾がないという場合には,μ(E) に対するマージが絶対値が大きなスキャンに引きずられてしまいます.規格化された μ(E) についてマージを行えばすべてのデータについて同じような重み付けで処理されます.このようなことは例えば,スキャン毎のアンプのゲインを変化させると起こります.このような場合,規格化されたものか χ(k) についてマージした方がよいかもしれません.

9.3.2. マージのオプション

重み付けオプション

マージするスペクトルの重み付けには3つの方法があります.デフォルトでは,«importance» パラメータの値を使ってマージが実行されます.デフォルトでは «importance» の値は1なので,この選択はたいていの場合,マージにおいてスペクトルをそのまま使うことを意味しています.«importance» はユーザによって変更可能なパラメータなので,重み付けはそれらの値を適切に設定することで好きなように行うことができます.他の2つの選択肢は,データの質に対して重み付けを試みるというものです.“noise” オプションは IFEFFIT が χ(k) において見積もったノイズを用います.すなわちノイズの小さなデータを強い重み付けを行います.“edge step” は規格化の際に決定される «edge step» の値を使います.すなわち,吸収端のジャンプが大きなものを重視してマージを行います.吸収端オプションのアイデアは,蛍光法による測定を行ったデータのためにあります.より濃度の高い試料は大きな吸収端のジャンプをしめし,データの質も高いと考えられます.つの重み付けの選択肢は Merge メニューにあるラジオボタンを使うことで変更できます.

環境設定

環境設定 の中には,マージを行った時の動作に対して効果があるものもあります.♦Merge→exclude_short_data では,マージする際にエネルギー範囲の短いものを除外するかどうか設定することができます.デフォルトでは,エネルギー範囲の短いものは除外されます.♦Merge→short_data_margin は,どの程度のデータ点であれば除外するかを決めています.♦Merge→weightby は上で説明した3つ選択肢のうちのデフォルトの選択を設定します.

9.3.3. キーボードショートカット

マージ用にもショートカットがあります.

  • Ctrl-shift-m : μ(E) でマージ

  • Ctrl-shift-n : 規格化された μ(E) でマージ

  • Ctrl-shift-c : χ(k) でマージ




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