9.11. 多電子励起の除去

bend XAS は通常は一電子過程によるものと考えられています.光子が入り,光電子が出て行く.実際のところ,多体現象が起こる可能性はあり,場合によっては XAS データの解釈において考慮されなければなりません.そういったものの1つにいわゆる “shake-off” 効果,すなわち光電子がよりエネルギー準位の高い位置にある電子を励起するのに十分な運動エネルギーを持っている場合があります.例えば,U LIII edge の 415 eV 高エネルギー側の光電子は,N6 あるいは N7 の遷移を励起させることができます.

この二次的な吸収端の断面積はとても小さいです.この LIIIN6,7 遷移の例では,二次的な断面積は一時的な LIII 吸収端のよりも3桁ほど小さなものです.もし,この例において,10.5 Å-1 より高エネルギー領域で適当な EXAFS スペクトルが得られたとすれば,多電子励起はもはや LIII 端の EXAFS に比べて小さいとは言えないでしょう.他の他電子励起では一次的な励起過程よりも大きな断面積を持っていることさえあります.多電子励起についてのより詳しい議論については,Iztok Arcon の多電子励起に関するページ を見て下さい.

その他の似たような現象としては,原子番号の1つ大きな元素がわずかに不純物として存在しており,測定対象の吸収端の上に小さな吸収端を示す場合です.場合によっては,この小さな吸収端は,μ(E) のデータを見てもほとんどわからないくらいでしょうが,χ(E) でプロットした際には段差としてはっきり見えるでしょうし,フーリエ変換した際には χ(R) スペクトルの R として小さなところに影響を与えます.

ATHENA は多電子励起あるいは微量の不純物による段差をデータから取り除くための2つの比較的簡単なアルゴリズムを提供しています.One models the multi-electron excitation as a reflection of the data translated to the position in energy of the excitation. もう1つは特定のエネルギーにアークタンジェント関数を引くその結果を適切に評価するための十分な知識が必要です.

ご用心

ここで示されているアルゴリズムを利用するには十分よく考えられたユーザ入力と適切に結果を評価するのに十分な知識が必要です.気をつけてください!

それでは,やってみましょう.

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図 9.32 多電子励起除去ツール

残念なことに,ATHENA にはこれらの微妙なパラメータを推定するための現実的な方法はありません.よって,全てはユーザの適切な設定にゆだねられています

以下は吸収端の 120 eV 上に [3p4d]5d の励起過程を示す LaCoO3 のデータです.

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図 9.33 La LIII-edge のデータにおいて,吸収端から 120 eV 上に生じる [3p4d]5d の多電子励起を除去した結果.この励起はエネルギーに対するプロットのカーソルで示されているところにあります.

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図 9.34 その影響は右に示した χ(E) のデータではより強調されています.

多電子励起過程のより詳しい情報については,以下を参照してください.

  • A. Kodre, I. Arcon, M. Hribar, M. Stuhec, F. Villain, and P. Parent. Double photoexcitation [2(s,p)4(p,d)] in the Xe-isoelectronic series Cs+, Ba2+, La3+. J. Phys. IV, 4(C9):C9–397 – C9–400, 1994. doi:10.1051/jp4:1994966.

上のスクリーンショットに示されているパラメータを使うと,図中の赤線で示されたところで除去が行われます.シフトはまず,XANES のホワイトラインと 5.7 Å-1 に見られる特徴的な箇所の間で推定されます.その値は,121.04 eV とわかります.少し調べた後,私は 122 eV に設定しました.

この例の場合,反映されたデータの強度は 0.014 にスケールされました.この値は吸収端の半分の値です.つまり,その値は規格化されたデータに依存します.もし,この値が負の値になるようであれば,実際には,0 に設定されます.(つまり,除去は行われません)

最終的に,XANES のデータは 2, 3 eV だけブロード化されます.もし,この値を 0 あるいは負の数に設定すると,0.01 eV が値として,使われます.

一度,多電子励起除去をうまくできる一連のパラメータを見つけられれば,励起の効果が除去されたデータはグループリストのグループとして保存されます.

他のすばらしい χ(E) データへの小さな多電子励起の影響に関するよいレファレンスとしては,以下があります.

  • Christoph Hennig. Evidence for double-electron excitations in the L3-edge x-ray absorption spectra of actinides. Phys. Rev. B, 75:035120, Jan 2007. doi:10.1103/PhysRevB.75.035120.

このツールはデータに表れる他の元素の小さな吸収端による邪魔な部分を大まかに除去することにも使うことができます




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