3.5. データの前処理

ATHENA では,データを読み込むときに様々な処理を行うことができます.この前処理には列選択ダイアログの左下にあるタブを使います.ここで紹介する前処理は全て,データを読み込んだ後にも行えます.詳しくは データ処理の章 を参照してください.

3.5.1. クイックスキャンデータの間引き

いくつかのビームラインでは Quick scan 測定が可能です.Quick scan 測定では,分光器が始点から終点まで連続して動作します.検出器も連続的に測定し,一定間隔でデータを出力します.データ間隔と分光器の速度から,測定するエネルギー間隔が決まります.一般的には,吸収端付近で十分な分解能が得られるように測定パラメータを設定します.間隔は,0.3 - 0.5 eV にすることが多いです.そうすると,EXAFS 領域での測定点が多くなり過ぎてしまいます.EXAFS での統計性を改善したり,データ数を減らしたりするため,データの間引きを行うと良いでしょう.この操作では,boxcar 平均を使うことで,等間隔の Quick scan のデータを一般的な EXAFS の間隔に合わせます.この間隔はたいていの場合,プレエッジ領域では 10 eV 程度,吸収端付近では 0.5 eV 程度,EXAFS 領域では 0.05 Å -1 程度です.

下図は,Quick scan で測定したウラン化合物のデータの読み込み画面です.

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図 3.14 列選択ダイアログを使った,データ読み込み中におけるその場でのデータ間引き

この段階では,ATHENA は測定した吸収端を判別できないため,あなた自身が対象元素を指定する必要があります.その他の数値パラメータが,これらのデータをどのように間引くか決定します.最初の2つの数字は,XANES 領域の範囲を,3つ目の数字はプレエッジ領域でのエネルギー間隔を,4つ目の数字は XANES 領域でのエネルギー間隔を,最後の数字は,EXAFS 領域でのエネルギー間隔を波数で指定します.

ATHENA は,一度設定したパラメータを記憶します.しかし,初期設定では新しいデータが読み込まれるごとに間引きはオフになります.データを読み込む度に Perform rebinning ボタンをチェックして下さい.複数のデータセットを読み込む際には,他の複数データ読み込みと同じように,同じ形式のデータなら同じ設定が適用されます.

3.5.2. 他のデータ前処理手順

lightning Preprocess のタブでは,データ読み込みの際に実行可能な他のいくつかの前処理について制御することができます. 1番目の項目は – マーク(チェック) – に関するもので,データを読み込んだ際にチェックをつけるかどうかを選べます.他の2つは標準試料の指定が必要です.タブ上部のメニューからグループリストにあるすべてのグループが選択可能です.その中で選択されているものが標準試料として設定されます.

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図 3.15 ファイル選択ダイアログによるデータ読み込み時の前処理

上記のデータ前処理操作について紹介します.

データにチェックを付ける

これが選択されていると,読み込まれたデータの全てに チェック が付きます.ただし,参照試料のデータにはチェックが付きません.また,この項目は他の前処理オプションとは異なり,新しいデータを読み込む度にチェックが外れます.

標準試料に対する整列

これが選択されていると,データは設定された標準試料に対して, 自動整列アルゴリズム により整列されます.もし,データと標準試料が共に参照試料に関連づけられていれば,これらが自動整列に利用されます.

標準試料のパラメータ適用

これが選択されていると,«eshift» 以外のすべてのパラメータに 標準試料の値が適用 されます.

前処理タブは ATHENA において真に強力な機能の内の1つです.前もって少し考えておくだけで,ほとんどのデータ処理を自動的に行うことができます.私の場合は,1つのデータを読み込んで,注意深く較正を行い,様々なパラメータを決定します.それから,残りのデータを同じパラメータを適用して読み込みます.データ処理にかける時間を小さくすることができ,特にビームラインにおいてとても役に立っています.




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