Research

新しい複合アニオン化合物の合成

 金属酸化物は、セラミックス材料の中でも最も大きな化合物群の一つです。空気中には酸素が豊富に含まれているため、大半の金属酸化物は、金属イオンを含む原料を空気中で加熱するだけで容易に合成可能です。金属酸化物では、金属イオンの組成を変えることで、多種多様な材料がこれまで合成されてきました。私たちの研究室では、金属イオンのみならず、アニオン(陰イオン)の組成に着目し、新しい材料の合成を試みています。セラミックス材料を形成しうるアニオンとしては、酸化物イオン以外にも、窒化物イオン、ハロゲン、硝酸イオンのような分子アニオンなどが挙げられます。複数の異種アニオンを含む化合物は複合アニオン化合物と呼ばれ、金属酸化物の概念を拡張する材料として注目されています。当研究室では、酸素とフッ素を組み合わせた酸フッ化物を主体に、新しい複合アニオン化合物、新しいセラミックス材料の合成を目指しています。

負熱膨張材料

 一般的な物質は、温めると体積が膨張する熱膨張を示します。しかし、中には温めると縮むという不思議な性質を示す化合物も存在します。この現象は、負の熱膨張係数を持つことから負熱膨張と呼ばれています。近年、体積収縮を伴う相転移を利用することで、従来にはない大きな負熱膨張を示す材料が発見されています。当研究室でも、体積が収縮する相転移を示す化合物に着目し、その特性を組成制御することで、新たな負熱膨張材料の探索に取り組んでいます。

誘電材料

 電流を流さない絶縁体は、電圧をかけると電荷を溜める性質を示します。この電荷を溜める性質は誘電性と呼ばれ、コンデンサーなどの電子材料に応用されています。セラミックス材料が誘電特性を示すためには、結晶構造中の正の電荷を持つカチオンと負の電荷を持つアニオンが、どのような幾何学的配置で存在しているかが重要な要素となります。当研究室では、この点に着目し、価数の異なる元素を組み合わせることで、新しい誘電材料の合成を行っています。

磁性材料

 磁性もセラミックス材料の重要な機能の一つです。不対電子を持つ磁性イオンを持つ物質は磁性体となりますが、それらが機能を示すためには、巨視的な磁気秩序状態を制御することが重要です。磁気秩序状態は、磁性イオン内の不対電子の状態と磁性イオン間の相互作用を重要なパラメーターとして持ちます。当研究室では、アニオンサイトを複合化することにより、単一アニオン化合物では得られないような磁性を示す材料の研究を行っています。

回折法を用いた結晶構造解析

 セラミックス材料の理解には、物質の構造を知ることが不可欠です。原子の並び方がわからなければ、性質と関連付けた議論はできません。セラミックスの結晶構造を明らかにする上で、回折法は最も有効な手段の一つです。当研究室では、X線や外部研究施設の放射光を用いた実験を行い、合成した物質の結晶構造を精密に評価しています。