我々の研究室では,化学工学・プロセス工学・物理化学をベースに,各種ナノ材料の合成と応用技術の開発を行っています。
同じ材料であっても合成プロセスによって構造が大きく変わり,構造によって機能が大きく変わります。
その制御のためには,最適化に留まらない現象のメカニズムの深い理解が重要です。
環境問題やヘルスケアの問題に対し,革新的な次世代技術の開発を目指して,他分野とのコラボレーションも積極的に行っています。
カーボンナノチューブ(CNT)は炭素原子のみから成るチューブ状の物質で,
六角形の網目状に結びついた炭素原子のシートが筒状になった構造をもっています。
ナノメートルスケールの直径や高いアスペクト比,高い電気・熱伝導性を有することからさまざまな応用が期待されてきました。
しかし,生産コストが高いことや,特性を活かした構造を作製するのが難しく,実用化の障壁となっています。
我々は特性を活かす構造や量産できる手法の開発,また新たな応用の開発に取り組んでいます。

CNTを電気化学的に利用するためには,CNTと導電性下地の電気的コンタクトを制御する必要があります。
導電性下地上の触媒ナノ粒子は不安定であるため,CNTを高密度に成長させるためには,
触媒/下地の界面エネルギーなどを制御した触媒ナノ粒子の形成が必要です。

我々の研究室では,平衡論・速度論的な観点から,触媒/下地の組み合わせを設計すると共に,CNTの成長メカニズムを詳しく調べることで,
これまでで最も高い質量密度を持つCNTフォレスト成長に成功しました(
研究業績の
論文[15],
論文[21],
論文[24]
)。
また,このCNTフォレストを電気化学バイオセンサーに応用し,神経伝達物質であるドーパミンをアスコルビン酸(夾雑物)が高濃度で共存していても高い感度で測定可能であること,
さらにCNTフォレストが高い汚染耐性(anti-fouling property)を持つことを示しました(
研究業績の
論文[38]
)。
近年,バイオテクノロジーと電子デバイスが密接に関わり合い,そのインターフェースの制御が重要になってきており, CNTやグラフェンなどナノカーボン材料の重要性はますます高くなっていくと考えられます。 現在は,新たな触媒設計などを行うことにより,より実用的な応用技術の開発を行っています。
近年,バイオテクノロジーと電子デバイスが密接に関わり合い,そのインターフェースの制御が重要になってきており, CNTやグラフェンなどナノカーボン材料の重要性はますます高くなっていくと考えられます。 現在は,新たな触媒設計などを行うことにより,より実用的な応用技術の開発を行っています。
基板上に高い数密度でCNTをフォレスト状に成長させると,長尺なCNTを高効率で得ることができます。
集合体ではない一本のCNTでは50 cmのものもありますが,CNTの数密度が高いCNTフォレストでは2 cm程度での成長停止が課題でした。

成長の停止には,高密度に存在する触媒ナノ粒子の構造変化が大きく関わっていることが分かっていました(
研究業績の
論文[21])。
我々は,ガス中に鉄(Fe)とアルミニウム(Al)の原料を極微量に添加する新たな成長方法を開発し,
近年開発したガドリニウム添加触媒(Fe/Gd/Al2Ox)(
研究業績の
論文[42],
プレスリリース)と組み合わせることで,速い成長速度と長い触媒寿命を両立させました(
研究業績の
論文[50],
プレスリリース)。
最適条件においては,成長は26時間持続し,最長で14 cmのCNTフォレストが成長しました (成長中の動画(YouTube))。 また成長条件の詳細な検討から長尺成長を可能にする必要条件を調べた結果,ガス中へのFeとAl原料の添加がCNTの成長中に起こる触媒の構造変化を抑える効果があることが確認されました。 現在,更なるメカニズムの解明と新たな成長方法の開発を目指して研究を行っています。
最適条件においては,成長は26時間持続し,最長で14 cmのCNTフォレストが成長しました (成長中の動画(YouTube))。 また成長条件の詳細な検討から長尺成長を可能にする必要条件を調べた結果,ガス中へのFeとAl原料の添加がCNTの成長中に起こる触媒の構造変化を抑える効果があることが確認されました。 現在,更なるメカニズムの解明と新たな成長方法の開発を目指して研究を行っています。
長尺CNTフォレストの成長の様子(750 °C ,32時間)