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表面設計化学研究室 研究テーマ




1)ソルボサーマル法によるナノセラミックスの合成

2)超高活性光触媒の合成と活性-物性相関の解析

3)光触媒の還元作用を利用する選択的物質変換反応

4)金属(イオン)-酸化物の相互作用を利用する可視光応答型光触媒の開発





















 1)ソルボサーマル法によるナノセラミックスの合成

 ソルボサーマル法とは加熱溶媒中において物質を合成する手法で、溶媒には水が広く用いられています。 その水の代わりに有機溶媒を用いる合成手法の開拓を1990年代から実施しています。本法では、有機溶媒や原料の多様性を活用することができます。また、有機溶媒中に水を少量加えることにより、有機溶媒単独がもつ合成環境をさらに多様化させることができます。 これまでに、研究室では、有機溶媒中でチタンアルコキシドを加水分解すると同時に水熱結晶化させるHyCOM(Hydrothermal Crystallization in Organic Media)法、チタンアルコキシドを有機溶媒中で熱分解させる手法TD(Thermal Decomposition)法、 合成反応系内で溶媒アルコールの脱水により均一に生成する水を用いてアルコキシドを加水分解させると同時にTiO2を結晶化させるTHyCA (Transfer Hydrolytic Crystallization in Alcohols)法などを開発しました。 これらの手法により、アナタース型酸化チタン、ブルカイト型酸化チタン、酸化チタン-シリカ複合材料、酸化ニオブ、 酸化タンタル、酸化タングステン、酸化鉄、フェライト、リン酸バナジウム、リン酸アルミニウムなどを合成することができました。 酸化物化合物はすべてナノ結晶であり、高結晶性、大比表面積、耐熱性という特長を示します。

 HyCOM法TiO2のTEM写真(左図)と温度制御による結晶サイズの制御(右図)













2)超高活性光触媒の合成と活性-物性相関の解析

 以前より高活性光触媒の要件として、高い結晶化度と大表面積の両立であると提案されていました。 これは、表面積が大きくなると電子と正孔の表面反応速度が大きくなり、結晶性が高い、つまり欠陥が少ないと再結合速度が小さくなるからです。 当時の合成手法では、この相反する物性を両立させることは困難でしたが、1)で紹介した3つの方法で得られた酸化チタン(TiO2)はそれを満足しています。 期待通り、酸素共存下における酢酸の無機化反応(CH3COOH + 2O2 → 2CO2 + 2H2O)において、 HyCOM法TiO2は市販高活性TiO2であるP25(Degussa)やST-01(石原産業)にくらべて約3倍の反応速度を示しました(下図)。 また、白金を担持後に2-プロパノールからの水素生成反応(CH3CH(OH)CH3 → CH3COCH3 + H2)に用いたところ、P25の2~3倍の大きな反応速度が得られ、量子収率は30%を越えました。 これまで、P25やST-01が「高活性」と報告されてきたことを考えると,HyCOM法TiO2は「超高活性」と称することができます。 また、TD法およびTHyCA法で合成したTiO2や酸化ニオブ、酸化タンタルなども期待通りの高い光触媒活性を示すことが判明しました。 様々な物理化学的手法を用いてHyCOM法TiO2を評価したところ、ナノ結晶であること(高結晶化度・大表面積)が高い光触媒活性の要因になっていることが明らかになりました。 現在では、ソルボサーマル法によるナノ結晶合成が高活性光触媒(可視光応答型も含む)開発の基本戦略となっています。













 3)光触媒の還元作用を利用する選択的物質変換反応

 TiO2がもつ正孔の強い酸化力を利用する試みは広範に検討されていますが、その還元力を活用した研究例は少ないです。さらに、電子の還元力はTiO2の価電子帯の位置で決まるので、反応性や選択性を制御することは難しいと思われてきました。しかしながら、正孔捕捉剤、金属助触媒、雰囲気、溶媒などの適切な選択により、TiO2の還元反応が制御され、また、高い(化学)選択性、化学量論および物質収支が得られることを見いだしました。たとえば、ビニルニトロベンゼンのニトロ基のみをアミノ基に化学選択的に還元することはこれまで難しかったですが、TiO2光触媒反応により容易に達成されました(左上図)。また、パラジウム担持TiO2(Pd-TiO2)光触媒により、クロロベンゼンの脱塩素が進行し、ベンゼンを定量的に回収できることを見いだしました(右上図)。さらに、Pd-TiO2およびAg-TiO2の二種光触媒のアンサンブル効果により、水中亜硝酸が窒素へ還元無害化されることを明らかにしました(下図)。
 











 4)金属(イオン)-酸化物の相互作用を利用する可視光応答型光触媒の開発

 太陽光を光源とする光触媒反応を効率よく進行させるためには可視光応答型光触媒の開発が必要不可欠ですが、2)で紹介したように高結晶化度・大表面積を両立させる必要があります。 新規な可視光応答性光触媒として、ロジウムイオン(Rh3+)修飾TiO2を開発しました(左上図)。これはRh3+をHyCOM法TiO2上に吸着させるだけで調製できます。 各種揮発性有機化合物の分解・無機化において、他の金属イオン吸着光触媒に比べて高い活性を示すことを見いだしました(右上図)。 Rh3+の状態や機能については現在も検討中であるが、光吸収と有機物の酸化の両機能に加えて、酸素分子の多電子還元触媒としても機能していると考えています。  また、金(Au)ナノ粒子を固定化したTiO2や酸化セリウム(IV)は、550 nm付近にAuの表面プラズモン共鳴(SPR)による強い吸収を示します。 これらの材料は、緑色光照射下において、各種有機酸の分解、ベンジルアルコール類のアルデヒドへの定量的酸化、各種有機および無機化合物からの水素生成反応(左下図)に活性を示すなど多様な光触媒作用を示すことを見いだしました。 さらに、Au表面を銅(Cu)で覆ったAuコア-Cuシェル型光触媒ではSPR吸収が630 nmまで移動し、赤色光照射条件で各種有機酸を分解することがわかりました(右下図)。







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