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Research

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酸素吸放出材料

酸素吸放出材料とは,文字通り酸素を吸放出できる物質,特に金属酸化物のことを指します.

例えば,酸化鉄は Fe2O3, Fe3O4, FeO あるいは金属 Fe など様々な酸化状態を取り,相互に変換される際に酸素を吸放出するため,酸素吸放出材料と呼ぶことができます.この定義であれば,およそすべての金属酸化物は酸素吸放出材料であるといえるしょう.しかし,一般には,何らかの条件,特に周囲の雰囲気に合わせて酸素を吸放出する性質を持っている物質,あるいは何らかの条件,例えば温度によって酸素を吸放出する性質を持っている物質のことを酸素吸放出材料と呼ぶことが多いようです.

前者の例として,自動車排ガス浄化触媒に助触媒として利用される CeO2-ZrO2などが挙げられます.自動車排ガス中に含まれる窒素酸化物,一酸化炭素,燃料残渣の炭化水素などは三元触媒などの自動車排ガス浄化触媒によって,窒素へと還元,二酸化炭素,水へと酸化することで無害化されています.この反応では酸化反応と還元反応を同時に起こすため,ちょうどいい酸素濃度を維持する必要があります.

後者の例としては,温度によって結晶構造の変化を伴いながら,比較的低温で酸化され,高温になると酸素を放出するペロブスカイト系金属酸化物が挙げられます.つまり,温度を変化させるだけで酸素を吸放出する「入れもの」として使えたり,空気中で酸化して,真空中で酸素を放出することができれば,高純度の酸素を得られたりするため,このような応用が考えられています.

当研究室では,元素戦略プロジェクトにおける自動車排ガス浄化触媒の助触媒としての応用から研究を始めた経緯もあり,

  1. 汎用元素で構成されている

  2. 高温等の厳しい条件に耐える

  3. 実用的な酸素吸放出容量・速度である

といった条件を満たす材料探索と共に,酸素吸放出メカニズムを明らかにするといった学術的な観点から研究を行っています.

電極触媒

X 線分光

高分解能蛍光 X 線検出法

試料に対して X 線のエネルギーを変化させながら,X 線の吸収量を測定したときに得られる X 線吸収スペクトルは,内殻電子の遷移に由来しているため,特定の元素のみの状態を反映したスペクトルを得ることができます.

しかし,試料中に含まれる元素の内殻電子の遷移が比較的近いエネルギーで起こる場合には,EXAFS スペクトルの解析が困難になります.また,内殻電子のエネルギー準位の不確定性により,得られるスペクトルのエネルギー分解能は高くなく,微細な対象原子の状態変化を捉えることは容易ではありません.

高分解能蛍光 X 線検出 (High Energy Resolution Fluorescence Detection, HERFD) は,試料から放出される蛍光 X 線を分光結晶により,高いエネルギー分解能で分光することにより,これらの問題を解決します.

本手法を用い,多成分混合試料の X 線吸収スペクトルの解析や特定元素の局所構造,電子状態の解析に取り組んでいます.

実験機器

  • マッフル炉 (300Plus, デンケンハイデンタル) 2台

  • 小型電気炉 (NHK-170AF, 日陶化学)

  • 回転ディスク電極装置 (RD-5, 日厚計測) 2台

  • 電気化学測定システム (HZ-7000, 北斗電工) 2台

  • 電気化学測定システム (HZ-Pro, 北斗電工)

  • 充放電測定装置 (580, Scriber Associates)

  • ペルチェ素子型恒温装置 (ICI-100, アズワン)

  • 錠剤成型器 (リケン)

  • ウォーターバス (BS401, ヤマト科学)

  • 超純水製造装置 (Direct-Q UV 3, メルクミリポア)

  • 管状炉 (アサヒ理化製作所) 2台

  • 熱重量分析装置 (TG-51H, Shimadzu)

  • フーリエ変換赤外分光光度計 (FT/IR-4000, JASCO)

  • 紫外可視分光光度計 (V-700, JASCO)