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NAKANO GROUPKindai Univercity

Research

Designing Materials with Water, Carbon, and Silicon
近畿大学理工学部応用化学科ナノ材料創生化学研究室

概要

2004年に黒鉛の一原子層であるグラフェンの発見に端を発し、二次元構造を有する原子層材料が世界的に大きな注目を集めています。中でもケイ素が六角ハニカム格子状に結晶を組んだシリセンは、2013 年に超高真空下で銀基板上に合成されて以来、ポストグラフェンとして着目を浴びています。ケイ素は炭素より原子サイズが大きいために、二次元シートはバックルしており、スピン軌道相互作用が比較的大きくなりグラフェンよりも豊かな物性が潜んでいると期待されています。例えば、最近、大きな関心を集めているトポロジカル絶縁体の最有力候補となっていますし、従来のシリコンデバイスとの相性も良く、ありふれた物質であるケイ素から機能性材料が創製できる大きなチャンスを有しています。
その一方でシリセンはケイ素のsp2-sp3混成軌道で構成されているため、大気中では容易に酸化分解する欠点があります。そこで、我々の研究室では世界に先駆けてシリセンの誘導体であるシリカン(全てのケイ素がsp3結合で構成)をウエットプロセスで合成することに着手し、水が付加してはいるものの、2006 年に世界で初めてケイ素六員環を保持したシリカンの合成に成功しました。継続して物性の拡張を目指した機能性有機基の賦与にも成功してきました。最近は、単層のシートに留まらず、二層から多層のシリセン、およびゲルマネンの合成にも成功しており、理論・物理・有機・計算化学の先生方と横断的に連携して高速電子デバイスや蓄電池活物質への応用を目指した研究を推進しています。

概要図

(1)シリセンの創製と物性開拓

層状シリコン化合物の単層剥離の研究を精力的に進める中で、CaSi2をソフト化学的に単層剥離して酸素でキャップされたシリセンが得られる事を初めて見出しました。得られたシートは、厚さが1nm 以下、横方向がマイクロメータサイズと形状異方性の極めて大きなシリコン単結晶二次元物質です。このシートへの機能性賦与を目的として、表面の有機修飾を行い、物質のバリエーションを拡張しています。

(1)シリセンの創製と物性開拓

(2)エネルギー貯蔵/電子デバイス応用

シリセンをリチウムイオン電池(LIB)の負極活物質に利用した研究を展開しています。その結果、現状の黒鉛の容量の3倍以上の容量を有するシリコン系の負極活物質を企業と共同研究を実施し、電動フォークリフトへ搭載しました。また、コバルト等の希少金属を用いることなく、クラーク数の大きな炭素(正極)とシリコン(負極)からなるアニオン二次電池を提案し、安全かつ低温特性に優れることを実証しました。
シリセンはバックリング角度に依存してバンド構造を制御できると理論予測されており、グラフェンの欠点を克服する新たな超高速電子デバイスへの応用が期待されています。しかし、大気中では数分で酸化分解する課題がありました。そこで、この課題を克服した二層シリセンの合成に成功し、大気中での取り扱いを可能にしました。併せて二層構造のゲルマネンの合成にも成功し、三層以上の新しい同素体の合成にも成功しています。

(2)エネルギー貯蔵/電子デバイス応用