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ケイ素三員環ラジカル種の開発に成功。物質系工学専攻大学院生、応用化学科学生の研究成果がアメリカ化学会誌に掲載されました。

2024.08.29

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物質系工学専攻大学院生の黒川秀真さん(M1)、大野稜真さん(2020年修了)、応用化学科学生の西村凪紗さん(2024年卒業)、谷口莞太さん(2024年卒業)、太田圭助教、松尾司教授と理学科化学コースの若林知成教授、慶應義塾大学・分子科学研究所の畑中美穂准教授、理化学研究所の橋爪大輔チームリーダー、メキシコグアダラハラ大学の Alfredo Rosas-Sánchez 教授は、ケイ素三員環ラジカル種(シクロトリシラニルラジカル)の開発に成功し、研究成果が化学分野のトップジャーナルであるアメリカ化学会誌(Journal of the American Chemical Society)(インパクトファクター 202314.4)に掲載されました(2024 8 27 日)。

高度に歪んだ三員環のラジカル種は研究例が乏しく、実現困難な仮想分子とされてきました。研究グループは、精密に設計したかさ高い置換基を駆使することで、ケイ素の三員環構造を持つラジカル種を室温で安定な化合物として初めて合成することに成功し、分子構造や電子状態、反応機構に関する新たな知見を得ました。不対電子を有する三員環のラジカル種は、合成化学における反応中間体や分子磁性体などの応用面はもちろんのこと、開殻分子の電子構造や化学結合の仕組みを探る基礎科学の面からも大変注目を集める研究対象であり、従来の常識の枠を超える学術的波及効果が期待されます。また、合成したラジカル種の前駆体であるケイ素三員環二重結合化合物(ブロモシクロトリシレン)は、既知のケイ素二重結合化合物と比べて空気中における安定性が驚異的に高く、ラジカル種以外のケイ素不飽和化合物への研究展開も期待されます。

今回のケイ素環状化合物の研究で得られた新しい知見に基づき、ケイ素原子を二次元的に連結する合成技術がさらに進歩することで、今後はケイ素の革新的素材であるシリセンなどの二次元ケイ素材料への応用が期待されます。

論文タイトル:Silicon Analogues of Cyclopropyl Radical Derived from a Highly Stable Cyclic Disilene Compound Featuring a Si-Br Bond
論文ホームページ:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.4c06111
論文 DOI10.1021/jacs.4c06111

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