近畿大学 生物物理化学(北松)研究室 The KITAMATSU Group

RESEARCH

Intracellular Delivery of Peptides and Proteins by CPP via Molecular Glue

タンパク質や機能性ペプチドなどのカーゴを細胞内にデリバリーすることは、将来的に医薬の開発に役立ちます。 細胞膜透過性ペプチド(Cell-Penetrating Peptide; CPP)とカーゴの直接連結による細胞内デリバリー法(下図A)は、有効なデリバリー法ですが、 CPPと細胞内の負電荷を含む分子との間の非特異的相互作用によるカーゴの機能阻害が懸念されます。 そこで我々は、ペプチド-ペプチド間相互作用を利用して1:1ハイブリッドを形成できる「分子のり」を開発します。 この「分子のり」によってカーゴとCPPを連結させます(下図B)。 「分子のり」のハイブリッドの形成の力を調製すれば、細胞外ではカーゴとCPPを連結させることができ、 細胞内ではカーゴとCPPを分離させることが期待できます。 これによりカーゴは、細胞外ではCPPの力を借りて細胞内に侵入することができ、 細胞内ではCPPの悪影響を受けずに、その機能を効果的に発揮することが期待できます。

miRNA Detection Inside Cell by PNA beacon

マイクロRNA(以下miRNA)は、比較的短いRNAの一種で、遺伝情報の伝達やタンパク質の合成に関与しない一方で、 遺伝子の転写後発現調節に関与することが示されています。 その中には、様々な疾患(癌や心臓病、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病など)への関与が示されているものもあります。 そのためある特定のmiRNAは疾患の超早期診断マーカーとして注目されており、miRNAの検出法に関する研究が重要となります。 そこで我々は、細胞内にある微量のmiRNAを検出するためにペプチド核酸(PNA)と蛍光発光を組み合わせることに着目しました。 具体的には、PNAの両末端にそれぞれ蛍光基と消光基を修飾し、さらに正電荷と負電荷をもつアミノ酸をそれぞれの末端付近に配置させた化合物を合成します。 標的のmiRNAが存在するとき、蛍光基と消光基は、PNA/RNA間のハイブリッド形成によって、PNAが引き伸びた結果、消光基の影響を受けずに蛍光基からの発光が観測されます。 一方で、標的のmiRNAが存在しないとき、蛍光基と消光基は、化合物内の正電荷のアミノ酸と負電荷のアミノ酸の静電引力により接近し、消光基を影響を受けて蛍光基は発光しません。 こうすることで、標的のmiRNAが存在するときにだけ、蛍光発光することが期待できます。 また我々は、この蛍光検出を細胞内で達成するために、上記化合物にCPPを取り付けます。

Intracellular Delivery of Boron Cruster for BNCT by Cell-Penetrating Peptide

ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy =BNCT)は熱外中性子線とホウ素の同位体を組み合わせた新しいガン治療法です。 我々は、細胞内導入可能なホウ素の同位体を開発することで、より効果的なBNCTのためのホウ素製剤を得たいと考えています。 そこで、我々はホウ素クラスターにチオエーテル結合を介して結合した膜透過性ペプチド(Cell-Penetrating Peptide = CPP)を合成しました。 この化合物は、うまく細胞内に取り込まれることがわかっただけでなく、腫瘍部分に特異的に集積することも明らかにしました。 現在、我々の研究室は、様々な細胞内導入可能なホウ素製剤の開発に取り組んでいます。

Anti-sense PNA

 ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid;以下PNA)は、主鎖骨格がアミド結合から成り、側鎖に核酸塩基を含む核酸類似化合物です。 PNAは、核酸であるDNAやRNAと塩基配列特異的に、かつ、非常に安定にハイブリッド(二本鎖)を形成することが知られています。 この性質を利用して、例えば細菌のハウスキーピング遺伝子に相当するmRNAに対して塩基配列特異的なPNAを、その細菌の細胞質に加えることができれば、 そのmRNAとPNAとの間のハイブリッド形成により翻訳を阻害することができ、ハウスキーピングタンパク質の発現を抑えることができます。  

Circularly Polarised Luminescence from Peptides Containing Fluorescent Dyes

水溶性の円偏光(Circularly Polarised Luminescence = CPL)材料は、環境負荷の少ないCPL材料を開発するうえで大事です。 この水溶性を円偏光材料に与えるために、我々は、ペプチドを利用しています。 水溶性のアミノ酸と蛍光性アミノ酸と組み合わせることで、水溶液中で、かつCPLを制御できる材料の開発が期待できます。

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