応用物理化学研究室
多田・杉目グループ
 
 

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研究概要
 我々の研究室ではエネルギー・環境・ヘルスケアの問題解決に向けて、各種ナノ材料の合成や半導体ナノ複合材料を用いた、太陽電池、水素製造光電気化学セル、可視光応答型触媒などの研究をしています。 再生可能エネルギーを用いた持続可能なエネルギーサイクルを実現するために、物理化学や化学工学の知識を用いたメカニズムの解明やそこから生まれる新たな応用技術の開発を目指しています。 下記に最新の研究の一部を紹介します。
ファセットAu//SrTiO3ナノキューブプラズモニック光触媒による水の酸化
 金はバルクでは不活性ですがサイズが10 nm以下になると、様々な化学反応に対して高い触媒活性を示すことから、金ナノ粒子を触媒に応用した研究が盛んに行われています。 また、触媒反応は表面でおこるため活性は金ナノ粒子の形状に強く依存しており、ファセットを形成した金ナノ粒子のエッジやコーナーが活性点になることが知られています。

 一方、再生可能エネルギーとしての太陽光有効利用の観点から, 金ナノ粒子と半導体からなるプラズモニック光触媒に大きな注目が集まっています。 プラズモニック光触媒においては、金ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴(LSPR)の励起によって可視光が吸収されホットキャリアを生成し、半導体の伝導帯へ注入されたホットエレクトロンによって還元反応が、金ナノ粒子上のホットホールによって酸化反応が進行します。

 今回、我々はヘテロエピタキシャル(HEPI)接合を有するAu TP//SrTiO3ナノキューブ(NC)の合成に成功し、 担体であるSrTiO3NCとのHEPI接合によって金ナノ粒子にファセットが誘起されることを明らかにしました(図1)。 通常、ファセット金ナノ粒子を合成する際には形状制御剤を用いますが、サイズが

10 nmを超える大きさで合成すると、表面に不純物が残存し、触媒活性の低下を引き起こすという問題があります。 一方で、本手法は従来のものとは異なり,クリーンなファセット金ナノ粒子が得られる大変魅力的な合成法です。

 さらにプラズモニック光触媒への応用として水の酸化反応を行ったところ、Au//SrTiO3NCは不定形であるAu/SrTiO3NPに比べ、著しく高い光触媒活性を示すことが明らかになりました(図2)。 これは、ファセットが誘起された金ナノ粒子のエッジやコーナー由来のホットスポットが発現することで近赤外域にまで応答し、プラズモニック光触媒の各ステップが増強され高い変換効率が達成されるためだと考えられます(図3)。

 この論文Chemical Communications Inside front coverに選ばれました。
SnO2(ヘッド)-TiO2ナノロッド(テール)ハイブリッドマイクロ粒子の光触媒への応用
 太陽光を利用して物質変換を可能とする光触媒は、エネルギー環境問題を解決することのできるカギとなる材料(キーマテリアル)であり、その光触媒活性は次に示すファクターによって決まると言われています。

光触媒活性 = 光吸収 × 電荷分離 × 酸化還元反応

我々の研究室では光触媒活性の向上を目的として図1に示す「うに状の構造体」を合成しました。期待効果としては次の2つが挙げられます。

@ 入射光がTiO2ナノロッド間で多重散乱することによる光吸収能の向上

A TiO2とSnO2のハイブリッド微粒子中に生成した励起電子のベクトル的電子移動移動に由来する電荷分離能の向上


 エタノールからアセトアルデヒドへの部分酸化反応においてTiO2のみからなるマイクロ粒子に比べて高い光触媒活性を示すことが明らかとなりました(図2)。 本光触媒は水熱合成法を利用して合成しており、形成メカニズムは下記のプロセスによって進行すると考えています。

 1. SnO2(コア)-アモルファスTiO2(シェル)の形成
 2. SnO2の(001)面上でのTiO2の核生成とヘテロエピタキシャル成長
 3. 自己集合によるマイクロ粒子の形成

このメカニズム解明に関する 論文LangmuirSupplementary Coverに選ばれました。
FTO電極上での合成ガスのNH4+添加による効率的な電気化学的合成
 CO2還元反応は気候変動・エネルギー枯渇問題の解決と炭素循環型社会実現を可能とするために重要な技術です。 工業的に化石燃料を気化して作られる合成ガスはC1ケミストリーやフィッシャー・トロプシュ反応の原料である一方で環境負荷が大きいため、 もし再生可能エネルギーや余剰電力を利用して電気化学的につくることが出来れば、魅力的なグリーンプロセスの構築が可能となります。 合成ガスを構成するCOとH2の各生成反応の標準電極電位(SHE)は

   CO2 + 2H+ + 2e- → CO + H2O  E0 = -0.104 V   (式1)
   2H+ + 2e- → H2  E0 = 0 V   (式2)

であり、H2O中でのCO2還元は合成ガス生成に適した条件であると言えます。 しかし、CO2の溶解性が低下してしまう二律背反の問題があります。 そこで我々の研究室では、CO2還元反応において中性の溶液中にFTOと親和性が高くH+供与体としてはたらくNH4+を添加した 三電極系二区画セルを作製することで効率的な合成ガスの生成を目指しました。電流密度(J)とガスの経時間変化を測定すると共に(図1. A, C)、得られた各値からファラデー効率(η)の算出を行いました(図1. B, D)。

 その結果、NH4+添加なしの条件では、J = 0.7-1.3 mA cm-2ηCO= ~30% (28 μmol h-1)、 ηH2= 58→44% (45 μmol h-1)、 NH4+添加ありの条件では、J = 1.7-2.4 mA cm-2ηCO= ~30% (51 μmol h-1)、 ηH2= 55% (95 μmol h-1)と大幅な電流密度の向上が確認出来ました。

得られた結果より、図2に示すプロセスを経て反応が進行しているものと考えました。

 ・GC電極上での水の酸化反応
 ・FTO電極上で得られたe-との還元反応によりSnナノ粒子の生成(Sn/FTO)
 ・FTO電極上へのNH4+の吸着
 ・FTO電極上でNH4+を介したCO2の濃縮と一部のH+還元反応によるH2生成
 ・CO2還元反応によるCOの生成
 ・水中のH+とNH3によるNH4+の生成

本論文Chemical Communicationsに掲載され、Back coverに選ばれました。
RuO2#TiO2-Auヘテロナノ構造体による水と酸素からの過酸化水素光生成
 過酸化水素(H2O2)は分解産物が水と酸素のみといった特徴から、非常にクリーンな酸化剤・燃料として需要が高まっています。 しかし、現在の主要な合成法となっているアントラキノン法は多段プロセスであり、原料がアントラセン類であるため有害な有機溶剤が多量に必要であるといった問題を抱えています。 そこで、太陽光をエネルギー源として駆動する半導体光触媒を用いて、水と酸素を原料として過酸化水素を合成することができれば、前述した数多くの問題を解決できるだけでなく 低コストかつ環境調和型の新しい合成法として期待できます。

 当研究室では光触媒活性の指標の一つである電荷分離の向上を目指した研究を続けています。そのアプローチとして、ヘテロエピタキシャル接合(Hetero Epitaxial Junction)に着目しました。 これにより原子レベルで整合した界面の作製が可能であり、再結合中心が消失することから光触媒活性の向上が期待できます。


 RuO2とTiO2においては結晶構造の相性の良さから、 TiO2上を被覆するようにRuO2がエピタキシャル成長します(図1)。 その結果、TiO2上の活性サイトが覆われてしまい、光触媒活性が低下してしまうという欠点がありました。 そこで活性サイトの確保及び酸素の2電子還元反応の促進を目的とし、TiO2上に金ナノ粒子を担持しました。

 その結果、純水中においてRuO2上で水の酸化反応、金ナノ粒子上で酸素の2電子還元反応が進行することにより、過酸化水素生成のための理想的な生成サイクルを達成し、 従来の系に比べ2倍以上の光触媒活性を示すことを明らかとしました(図2)。 本論文Chemical Communications に掲載され、Inside back coverに選ばれました。
界面制御によるSnO2-TiO2ヘテロナノ構造体光触媒の活性向上
 半導体および金属により構成されるヘテロナノ構造光触媒はソーラー物質変換の鍵材料であり、その主要となる課題は「界面電荷移動」の促進です。 我々の研究室では、SnO2-TiO2ヘテロナノ構造光触媒において、ヘテロ界面およびホモ界面を制御することにより、界面電荷移動を促進し光触媒活性を向上する方法を見出しました。

@ヘテロ界面制御
 TiO2表面上にSnO2ナノロッドをヘテロエピタキシャル成長させたヘテロナノ構造体を合成しました(図1)。ヘテロエピタキシャル成長とは、異種半導体間における原子レベルで整合した結晶方位性を有する結晶成長をいいます。 これによりスムーズな界面電子移動に加え、SnO2中の結晶格子のひずみで誘起された一次元方向のバンド曲がりにより電荷分離効率が向上し、光触媒活性が増大することが明らかになりました(図2)。

Aホモ界面制御
 ヘテロエピタキシャル接合を有するSnO2ナノロッド-TiO2光触媒において、結晶性の向上を目的として300 - 800℃の温度で熱処理を行うと、

光触媒活性が熱処理温度の上昇に伴って増大し、600℃以上では減少する傾向が得られました。 これは、各熱処理温度で誘起された以下の現象が、SnO2結晶中の電子輸送効率に大きな影響を与えた事が原因であると明らかになりました。

 ・TC < 500℃: 結晶の融合が起こり単結晶に近いSnO2ナノロッドになる。
 ・600℃ < TC: SnO2中の結晶の微細化が起こる。

さらに、熱処理によるこれらの変化は、ヘテロエピタキシャル接合を有することに由来する特異的な現象であることが示されました。 このヘテロ界面制御に関する論文ChemPhysChemに掲載され、Front Coverに選ばれました。
 
 
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