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研究テーマ

1.円偏光発光(CPL)特性を有する光学活性有機材料の開発

円偏光発光(CPL)は、高輝度液晶ディスプレイ用の偏光光源をはじめ、3次元ディスプレイ、セキュリティーペイント、光通信などの高度な光情報プロセシングへの応用が期待されていますが、現在は、CPLを、円偏光フィルターを用い作り出しています。しかしながら、この方法では、フィルターを用いるため、光強度の大幅な減少が生じます。そこで、フィルター無しにCPLを作り出せる光学活性な発光材料の開発が注目されています。

1-1.円偏光発光(CPL)特性を有する光学活性超分子有機発光体の開発

発光性分子として2-anthracenecarboxylic acid、光学活性分子として(1R,2R)-1,2-diphenylethylenediamineを組み合わせることにより、光学活性な超分子有機発光体の創製に成功している。発光特性について検討したところ、発光性分子である2-anthracenecarboxylic acidに比べ、超分子・錯体化することにより、発光(PL)強度が大幅に増加するという、興味ある知見を得た。今まで、固体状態のCPL特性評価は、異方性の影響により困難であった。本研究では、円偏光二色性(CD)、拡散反射型CD(DRCD)、CPLを組み合わせることにより、CPLを測定することに成功した。

1-2.非古典的円偏光発光(NC-CPL)・円偏光二色性(CD)制御能を有する光学活性有機発光体の創製

  1. 一般的に、キラリティーに基づく光学特性を反転させるには、逆のキラリティーを有する光学活性分子を用いる。本超分子有機発光体系では、用いる光学活性分子のキラリティーの反転ではなく、アキラルな発光性分子の種類を変えることにより、超分子錯体の分子配列構造を変化させ、超分子有機発光体のCPL特性を反転させることに成功した。光学活性分子として(1R,2R)-1,2-diphenylethylenediamineを用いた場合、2-anthracenecarboxylic acid系発光体2-anthraceneacetic acid系発光体とでは、固体CPLスペクトルの符号が反転していた。X線結晶構造解析より、このCPLスペクトルの符号の反転は、構成分子のパッキング構造の違いに起因していることを明らかにした。
  2. 同じ光学活性軸不斉ビナフチルユニットにおいて、ビナフチルの二面体角の違いにより、CPLを反転させることに成功している。開環側鎖系ビナフチル化合物(S)-1のCPLを測定したところ、正(+)のCPLを観測したが、側鎖を結合させた閉環側鎖系ビナフチル化合物(S)-2では、同じ軸不斉を有しているにもかかわらず、負(-)のCPLを観測した。これは、ビナフチルの二面体角の違いによるものと考えられる。
  3. 同じ光学活性軸不斉ビナフチルユニットにおいて、隣接基効果の有無より、CPLを反転させることに成功している。光学活性ビナフチルユニットが1つの (R)-1およびユニットが2つの (R,R)-2のCPLを測定したところ、(R)-1では正(+)のCPLを、(R,R)-2では負(-)のCPLをと、同じビナフチルユニットを有しているにもかかわらず、CPLが反転する事を見出した。これは、隣接基効果の有無によるものと考えられる。
  4. 同じ光学活性軸不斉ビナフチル発光体において、隣接基効果の有無より、CPLを反転させることに成功している。(R)-1 のCPLをPMMAフィルム分散状態で測定したところ、負(-)のCPLを観測したが、KBrペレット分散状態で測定したところ、正(+)のCPLを観測した。これは、分子間隣接基効果の有無によるものと考えられる。

1-3.結晶多形(ポリモルフィズム)特製を有する光学活性有機発光体の創製

一般的に、光学活性な材料は、キラルな化合物から作製される。しかしながら、アキラルな発光性カルボン酸分子2-anthracenecarboxylic acidとアキラルなアミン分子benzylamineを組み合せることにより、2つの構成分子は、ヘリカルカラム構造を構築し、CPL特性を有する光学活性超分子有機発光体の創製に成功した。本系における、もう一つの興味深い点として、超分子・錯体化法を変えることにより、別の多形発光体が得られたことである。2-anthracenecarboxylic acidをbenzylamine蒸気中に静置し、超分子・錯体化させたところ、キラルな超分子有機発光体とは異なる、アキラルな超分子有機発光体が得られ、超分子・錯体化法を変えることにより、CPL特性の発現の有無を制御することに成功した。