====== 計算例 ====== ここでは,やや特殊な例であるが,LaAlO\ :sub:`3` の La L\ :sub:`1`\ -edge の計算例について,紹介する. LaAlO\ :sub:`3` の La L\ :sub:`1`\ -edge の計算例 ------------------------------------------------- 操作 ~~~~ 1. 以下のテキストを ``Sim/La/LaAlO3/L1/LaAlO3_green_r5_inp.txt`` に保存する. .. code:: Filout Sim/La/LaAlO3/L1/LaAlO3_green_r5 Range -20.0 1.0 -5.0 0.5 5.0 1.0 20.0 Radius 5.0 Edge L1 Crystal 5.370 5.370 13.100 90. 90. 120. 57 0.000 0.000 0.250 13 0.000 0.000 0.000 8 0.454 0.000 0.250 Convolution Green Spgroup R-3c:H End やはり,\ **!** から始まる行は無視される(コメント)行である. これまでに出てこなかったパラメータを示す. Green グリーン関数による計算を行う.現時点ではこのキーワードを入れる,と思ってよい. Spgroup 空間群を指定する.今回は **R-3c:H** である. 操作 ~~~~ 2. **fdmfile.txt** を以下のように書き換え,\ ``fdmnes_Win64.exe`` を実行する. .. code:: 1 Sim/La/LaAlO3/L1/LaAlO3_green_r5_inp.txt .. note:: ここでは Windows 上で ``fdmnes_Win64.exe`` を実行するように記述しているが,もちろん,先にインストールした並列版で計算してもよい.以下,同様である. 操作 ~~~~ 3. ``Sim/La/LaAlO3/L1/LaAlO3_green_r5_conv.txt`` を開くと,\ **Energy** と **** の列が現れる.FDMNES には GUI は無いので,このデータを Excel で開いてプロットしてみる. .. figure:: _static/LaAlO3_L1.png :alt: LaAlO3 の La L1-edge の例 :width: 60% LaAlO\ :sub:`3` の La L\ :sub:`1`-edge の例 ある程度うまく特徴をとらえている. 高エネルギー分解能 La L\ :sub:`1`\ -edge XANES の計算例 ---------------------------------------------------------- 次に,LaAlO\ :sub:`3` の La L\ :sub:`1`\ -edge 高エネルギー分解能 XANES を計算してみる. ところで,上記の計算をしているときには,入力ファイルである ``LaAlO3_green_r5_inp.txt`` と結果としてプロットした ``LaAlO3_green_r5_conv.txt`` 以外に, ``LaAlO3_green_r5_bav.txt`` というファイルと ``LaAlO3_green_r5.txt`` ができている. 操作 ~~~~ 1. ``LaAlO3_green_r5_bav.txt`` を開く. ``LaAlO3_green_r5_bav.txt`` はとても長いファイルで複雑な計算結果がすべて書き込まれている.こちらは複雑なので今はおいておこう. 操作 ~~~~ 2. ``LaAlO3_green_r5.txt`` を開く. ``LaAlO3_green_r5.txt`` を開くと, ``LaAlO3_green_r5_conv.txt`` によく似たファイルである.さて,上のほうで, Convolution これはキーワードでとりあえず書けばよいと思ってよい. と書いた.ファイル名末尾の _conv は convolution の略で,日本語ではたたみ込みと呼ばれる数学的な操作に対応している.ものすごく簡単に言ってしまうと,スペクトルを「なまらせる」(幅広くする)ことを指している. 操作 ~~~~ 1. ``LaAlO3_green_r5_conv.txt`` と ``LaAlO3_green_r5.txt`` の両方の **Energy** と **** の列について,Excel で開いてプロットしてみる. .. figure:: _static/LaAlO3_L1_conv.png :alt: LaAlO3 の La L1-edge の例 :width: 60% LaAlO\ :sub:`3` の La L\ :sub:`1`-edge のブロードニング ここで conv がついている方を conv,ついていないほうを「無し」とした. これまで X 線吸収スペクトルは離散的なエネルギー準位間の遷移なので,本来であればとても鋭いピークを示すが,各準位には不確定性(自然幅)があるため,スペクトルが幅広になる. FDMNES では,まずオレンジ色のエネルギーごとの遷移強度を計算し,次にこれをなまらせてことでスペクトルをシミュレーションしている.詳細については,FDMNES をダウンロードしたときについてきた ``Manual_Eng.pdf`` の Convolution width という項を読むこと.ごく簡単に言うと,FDMNES はデフォルトで各元素の吸収端に対してこれまで知られている「自然幅」を使って幅を広げているよ,ということが書いている.いくつかのパラメータが示されているが,まず最初に検討すべきは,\ **Gamma_hole** という値だ.これがピークの鋭さを決めていると考えてよい.小さければ小さいほど鋭くなる. よって,以下のように変更してみればよい. 操作 ~~~~ 1. 以下のテキストを ``Sim/La/LaAlO3/L1/LaAlO3_HERFD_green_r5_inp.txt`` に保存する. .. code:: Filout Sim/La/LaAlO3/L1/LaAlO3_HERFD_green_r5 Range -20.0 1.0 -5.0 0.1 5.0 0.5 20.0 2.0 50.0 Radius 5.0 Edge L1 Crystal 5.370 5.370 13.100 90. 90. 120. 57 0.000 0.000 0.250 13 0.000 0.000 0.000 8 0.454 0.000 0.250 Convolution Green Spgroup R-3c:H Gamma_hole 1.0 End 操作 ~~~~ 2. **fdmfile.txt** を以下のように書き換え,\ ``fdmnes_Win64.exe`` を実行する. .. code:: 1 Sim/La/LaAlO3/L1/LaAlO3_HERFD_green_r5_inp.txt 操作 ~~~~ 1. ``LaAlO3_HERFD_green_r5_conv.txt`` の **Energy** と **** の列について,Excel で開いてプロットしてみる. .. figure:: _static/LaAlO3_HERFD_L1_conv.png :alt: LaAlO3 の La L1-edge の例 :width: 60% 「高分解能」LaAlO\ :sub:`3` の La L\ :sub:`1`-edge プレエッジピークがはっきり見えてきた.しかし,実験結果とあっているとは言えない.ここからはいろいろなパラメータを変更していって,実験結果に合わせていく操作が必要である.ここまでのシミュレーションの入力ファイルのうち, .. code:: Radius 5.0 Green **Radius** (理論計算を行っているモデルの大きさ) を **5.0** としているのは明らかに小さい.また, **Green** というキーワードはグリーン関数というものを使って,\ **マフィンティンポテンシャル**\ による計算を行っている.更に,相対論効果を取り込む **Relativism** を使っていないし,自己無撞着場 (Self consistent field, **SCF**) 計算も行っていない.つまり,計算負荷を小さくするために簡易な計算を行っていることになる. これ以上は,例えば,マニュアルの Some advices to make the best possible simulation という章(マニュアルの最後のほうにある)を読み,様々なパラメータを変えて試してみることを勧める.