研究室で利用するサービスやツール#

注釈

このページは 近畿大学理工学部応用化学科物質機能化学研究室 の学生のために書かれています.

論文検索#

研究を進める上では,過去に報告された「論文」を読むことが欠かせません.過去の論文について何がどこまでわかっており,何が分かっていないのか,何をすれば新しい発見なのか,などいろいろな観点から読むことが必要です.

論文の種類#

「論文」は多くの場合,学術雑誌に掲載されたものを指します.いろいろな分類方法がありますが,大まかには,"Article", "Communication (Letter)", "Review" の3つがあると思えばよいです.

Paper, Full paper, Research Article

一般的な論文を指します.ページ数は分野,内容によりますが,一般的な論文といえばこの形式をさします.

Communication, Letter

ある発見が初めてであることを主張するために掲載される短い論文で,速報とも呼ばれます.但し,近年では Communication, Letter という形式ながらサポートデータが大量に付随しており,事実上 Article と大差ない文献も増えているように思われます.よって,Article との違いはあまり気にする必要はないかもしれません.

Review

総説と呼ばれる論文の一種で,新たなデータや知見を示すのではなく,これまで報告された論文をまとめて,ある研究がどのように発展してきたか,あるいはどのような問題点や課題があるかをまとめたものです.長いものが多いので躊躇するかもしれませんが,よくまとまった総説を読んでおくと,その分野の基礎が身につくこともあります.

Web サービス#

Web of Science#

「論文」は各出版社の Web ページから参照することができますが,現在では多くの出版社から出ている学術誌に非常に多くの論文が掲載されています.そこで,論文の情報をデータベース化したサービスが提供されています.主なサービスとして,アメリカ化学会が提供する SciFinder,Clarivate 社(Thomson-Reuter から独立)が提供する Web of Science,Elsevier 社が提供する Scopus,Google が提供する Google Scholar などがあります.いずれも便利なサービスであり,データベースの範囲が異なるので使い分けていくことになると思います.

掲載雑誌がある程度選別されている Web of Science を利用することを推奨します.

AtomWork#

当研究室で扱う化学物質の多くは原子が一定の規則で並んだ結晶性の物質です.例えば,ある無機化合物を合成したとして,例えばその「白い粉」が実際のどのような物質なのかは目で見ても判断がつきません.結晶構造をもつ物質を同定する汎用的な手法として粉末 X 線回折(X-Ray Diffraction, XRD)測定があります.X線回折の説明については教科書等に譲るとして,物質の同定は測定された X 線回折パターンと既知の物質データベースから得た結晶構造を元に X 線回折パターンをシミュレーション,照合して行われることが一般的です.

研究室では無機化合物を扱うことがほとんどのため,物質・材料研究機構 (National Insititute of Material Science, NIMS) が無償で提供している AtomWork という無機材料データベースを使い,既知化合物の結晶構造を得ます.

AtomWork 利用のための登録#

NIMS 物質・材料データベース に登録することで AtomWork が利用可能になります.2段階の登録作業が必要なのでやや煩雑ですが,マニュアル通りに登録すれば問題なく利用できるはずです.

一度ログインできれば,検索画面は比較的理解しやすいと思います.まずは自分で検索してみてください.

注釈

例えば,AtomWork で Al2O3 を検索しようとして,Chemical system に Al O と入力すると,2023年3月9日現在で10種類の酸化アルミニウムがヒットします.様々な Space group に帰属されており,これは同じ Al と O で構成された酸化アルミニウムであってもいくつかの原子配列(結晶構造)を取りうることを示しています.更に,Substance name に corundum と書かれたものを選ぶと,73もの構造がヒットします.これはいくつかの論文で報告された構造が一覧になって表示されているわけですが,いずれも合成条件や測定条件(例えば試料の温度)が異なるため,自分の試料に最も近いと考えられる条件で測定されたデータと比較するようにしましょう.